「巡礼者の受け入れ態勢」

今回は、「フランスの道」800キロをを踏破したわけではないので、全体をコメントすることはできないが、少なくともサリアからの120キロコースを歩いた印象では、巡礼を快適にするためのシステムが相当揃っていると言える。サリア、ポルトマリン、アルスア、ペドロウソ、サンテイアゴに宿泊したが、アルベルゲ(公営、民営)、ペンシオン、ホテル、カサ・ルラルと選択可能な宿泊施設が揃っており、年々増加している感があった。町や村の間には、適当な間隔でBARやレストランがあり、早朝に出発した巡礼者が朝食やコーヒーを飲むことができるし、トイレもある。町や村の最初のBARでは、トイレも込み合うが、2軒目となると問題ない。各地のレストランでは巡礼定食が8ユーロか10ユーロで食べられる。価格、味、ボリュームともにまずまずである。ステッキ、サポーター、帽子、リュックなど巡礼者グッズなどを販売する店も比較的大きな町ではある。タクシーも1キロ当たり、1ユーロとリーゾナブルであり、足や膝に問題が生じた巡礼を次の地点まで運んでくれる。リュックを運ぶサービスも3ユーロと大変安価である。以上のすべてがリーゾナブルなのでありがたい。最後の120キロの町村は、巡礼で生きている感がある。、

「巡礼の勧め」

サンテイアゴの巡礼証明書発行事務所では、巡礼の目的につき書かされる。宗教的な理由、精神的な理由、リクレーション的な理由等である。巡礼に行くのは、自分自身を探すためとか、自分を再生するためとか、宗教的精神的な悩みに立ち向かうとか言われる。しかし、歩いていると次の目的地に一刻も早く到着したい一心で、ほとんど考える余裕がないのが現実だ。足に豆ができたり、下り坂が続くと膝がガタガタになったりする。120キロという短い距離であっても、サンテイアゴに到着した時の喜びはひとしおである。
日本経済新聞の土田芳樹氏の講演では、企業の新入社員研修に最適だという話があった。確かに若い人が、120キロでも歩くと心身ともに鍛えられるし、多くの国からやってくる巡礼者との交流を通じて、国際感覚も身に着く。英語やスペイン語の重要さも身にしみて理解できる。私も大学生活最後の年に巡礼に出かけたが、もっと早く行くべきだったと思った。多くの学生に経験させたいとも思う。
一方、65歳以上の高齢者にも勧めたい。ただ、身体が頑健な人は、荷物を担いで800キロも歩くことができようが、普通の人の場合は、自分の身体能力に応じて、100キロか200キロあるいはそれ以上を選択する。無理をせず、1日当たり、10キロか15キロ程度歩く、重いリュックを担いで歩くことは、相当つらいので、決して無理をせず、リュック運搬サービスを利用すればいい。高年齢者にとって先着順で予約できない公営のアルベルゲ(巡礼宿)はお勧めできない。ペンシオンやホテルの値段は極めてリーゾナブルである。それらの施設に宿泊すれば何の問題もない。

「いくつかの追加コメント」

巡礼定食
各地で、MENUと呼ばれる巡礼定食がある。通常8ユーロから10ユーロである、巡礼の出発地点であったサリアのROBERTOというサリア川に面したレストランでは8ユーロであり、前菜(スープ、サラダ等から選ぶ)、メイン(魚と肉から選ぶ)、デザート、コーヒー付きである。味もまずまずだし、ボリュームも相当である。我々一行は、最初の巡礼定食に大いに満足した。その後もこの定食を食べている分には、胃袋も懐も安泰であった。ご承知の通り、スペインではワインは水と同じような扱いであった。ルーゴに向かうドライブ・インで昼食を取ったが、7.5ユーロの定食で飲み物がついており、ミネラル・ウオーター、ソフトドリンク、ビール、ワイン中瓶から選ぶようになっていたので、驚くとともに、大いに納得した。

タクシー
巡礼地でのタクシーは日本と比べると格安である。1キロメートル当たり1ユーロが相場である。例えば、ポルトマリンからパラス・デ・レイは28キロの距離だが、28ユーロである。アルスアのCASA RURALに行く場合でも、8キロであったが、9ユーロであった。またサンテイアゴからア・コルーニャ空港までは、75キロから80キロ離れているが高速道路料金を含めて、95ユーロであった。通常タクシーは4人乗りであるが、5人乗りもあり、尋ねてみると良い。巡礼地の町間の移動は、相乗り乗車が可能で、ホテルも積極的に進めるので、足を痛めた巡礼同志が経費を折半し、相乗りする。私もポルトマリンからパラスの28キロは4人で割り勘にした。

リュックの運送システム
足に豆ができたり、足や膝が問題である時は、躊躇なくリュック運搬サービスを利用すべきである。1区間(20キロでも30キロでも)3ユーロと格安である。ホテルやペンシオンで、タグをもらい、そこに名前や送り先のホテル名等を記入し、3ユーロを支払い、当日の朝9時までにホテルのロビーに置いておけば、当日中、自分たちが到着するまでに荷物が届いているという仕組みであった。我々のグループ8人の内6人が、初日にこのリュック運搬サービスに気づき、2日目から利用した。今から思うとこのサービスがなければ、120キロを全うできなかったのではないかと思われる。

WIFIの普及ぶり
巡礼道におけるWIFIの普及は驚くほどであった。メンバーの中では、中谷さんと藤津千巳さん綾乃さんがアイフォンを持参していたが、ほとんどあらゆるBARやホテル、アルベルゲにWIFI設備が整っており、時間を見つけては、家族とコンタクトをとっていた。私も事前に購入し、活用すればよかったとつくずく思ったものであった。中谷さんにお願いし、私の家族にメールしてもらった。

巡礼手帳と巡礼証明書
巡礼者の1つの楽しみは、巡礼手帳に各スポットでスタンプを押してもらうことであろう。日本でも巡礼手帳を入手することができる。「日本サンテイアゴ巡礼友の会」に申し込むと1000円で入手できる。巡礼地で購入すると2ユーロなので、日本製の巡礼手帳は割高であるが、日本語で書かれており、装丁も格段に良い。外国人の巡礼者に見せるとびっくりする。スタンプを押してもらう地点は、最初は分からないが、徐々にわかってくる。各地の教会やアルべルゲ、ペンシオン、ホテル、BAR,カフェテリア等々である。「SELLO」と書かれた看板のところには、スタンプが置いてある。スタンプを押してくれるところは、大抵受付者が日付けも書いてくれるが、自分で勝手に押し、自分で日付けを書くところもある。巡礼関連の本には、サリアからの巡礼は、少なくとも2か所以上の場所でスタンプを押してもらうことと書かれている。確かに1か所だけのスタンプだと中抜けが可能となり、歩かずに巡礼証明書が可能となるからである。サリアから少し歩いたところで、小さな台に食べ物や果物を載せ、販売しているところに蝶蝶のスタンプがあった。巡礼の道公認のスタンプかどうかわからなかったが押した。後で同じ巡礼者に見せ合ったところ蝶蝶のスタンプは珍しいとみえ、どこで押してもらったのかと聞かれた。