スペイン・ポルトガル・イベロアメリカと日本の姉妹都市提携について

執筆者: 桜井 悌司(NPO法人イスパニカ文化経済交流協会)

メキシコとの姉妹都市の特徴

 

日本とメキシコとの姉妹都市数は、合計11件である。最も多いのは、歴史的なきっかけである。例えば、仙台市とアカプルコ市は、慶長遣欧使節の支倉常長のアカプルコ港上陸の縁である。駐日メキシコ大使の仙台訪問時に仙台市から姉妹都市締結の意向が出された。ちなみに、アカプルコには支倉常長の銅像が建立されている。キューバのハバナとハポン姓(JAPON)で有名なスペインのセビリャ近郊のコーリア・デル・リオにも銅像がある。千葉県の御宿とアカプルコは、1609年にドン・ロドリゴ・デ・ビベロ率いるスペイン艦隊が御宿沖合で座礁し、村民が316人の乗り組み員を救助したことがきっかけである。また千葉県大多喜町とクエルナバカもドン・ロドリゴ関連で、座礁を報告したのが時の大多喜城主であった。その後2013年には、御宿がドン・ロドリゴの生まれた町であるテカマチャルコと姉妹都市提携を結んだ。埼玉県とメキシコ州、さいたま市と州都トルーカとの姉妹都市は、お互いに首都に隣接した縁で結ばれた。愛知県とメキシコシテイは、名古屋日墨協会ミッションがロサンゼルスを訪問した際に、ロスがメキシコシテイと姉妹都市なので、愛知県も結んではどうかということで締結された。京都とグアダラハラは、メキシコ姉妹都市国際委員会事務局長から日本の国際親善都市連盟事務局長にグアダラハラと京都の姉妹都市提携を要望するレターが出され、その後相互にミッションを交流させることにより、結ばれた。大阪の箕面市とクエルナバカはユニークで、モレロス州の大学との交流が盛んになり姉妹都市に結びついた草の根のケースである。最も新しい姉妹都市は、広島とグアナフアトであるが、マツダの企業進出が取り持つ縁と思われる。

表1メキシコと姉妹都市関係を締結している都道府県市町村

県名 自治体名称 提携自治体名 州・県・市等 締結年月
宮城県 仙台市 アカプルコ ゲレロ州 1973年10月
埼玉県 埼玉県 メキシコ州 1979年10月
埼玉県 さいたま市 トルーカ メキシコ州 1979年10月
千葉県 大多喜町 クエルナバカ モレロス州 1978年8月
千葉県 御宿町 アカプルコ ゲレロ州 1978年8月
千葉県 御宿町 テカマチャルコ 2013年10月
愛知県 名古屋市 メキシコシティ 1978年2月
京都府 京都市 グアダラハラ ハリスコ州 1980年10月
大阪府 箕面市 クエルナバカ モレロス州 2003年10月
和歌山県 和歌山県 シナロア州 1996年5月
広島県 広島市 グアナフアト州 2014年11月

出所:一般社団法人自治体国際化協会

ペルーの姉妹都市の特徴

ペルーと日本の姉妹都市数は、4件であるが、すべて2011年以降に締結されており、すべて最近のケースである。
ブラジルとの姉妹都市案件が2000年以降ゼロであることを考えると興味深い。姉妹都市のきっかけをみると、剣淵町は、開業した「ビバアルパカ牧場」でアルパカのつがいを受け入れたことをきっかけにアルパカの一大飼育地であるパルマヨカ区と締結。その後、その後剣淵町の公式使節団がタルマ市を訪問し、姉妹都市になった。ウルバンバ郡は、世界遺産「マチュピチュ」を有する場所であるが、山間地の高山市と似ていることから、ペルー共和国側から、友好都市提携の提案があり、締結に至った。大玉村については、世界遺産マチュピチュ村の開発に尽力した初代・行政最高責任者が大玉村出身の日本人移民の野内与吉だったことが縁で、マチュピチュ村側からの強い要望で実現した。

表2 ペルーと姉妹都市関係を締結している都道府県市町村

県名 自治体名称 提携自治体名 州・県・市等 締結年月
北海道 剣淵町 タルマ市 フニン県 2015年9月
北海道 剣淵町 パルカマヨ区 フニン県 2011年7月
福島県 大玉村 マチュピチュ村 クスコ県 2015年10月
岐阜県 高山市 ウルバンバ郡 クスコ県 2013年8月

出所:一般社団法人自治体国際化協会

その他のスペイン語圏の中南米諸国の姉妹都市の特徴

 

  1. チリの姉妹都市チリのラ・セレーナは首都サンテイアゴの北方470キロメートルに位置するスペイン風街並みの美しい町である。ノーベル文学賞のガブリエラ・ミストラルの生誕地である。姉妹都市の由来は、1964年に在チリ日本国大使がラ・セレーナ市長を式訪問した際に、市長から日本の宗教文化都市と姉妹都市提携を締結したいという申し出があったことで、天理市との間で成立した。
  2. コスタリカの姉妹都市
    • 岡山市―サンホセ
      1969年10月、当時の岡山市長がサンホセ市を表敬訪問、その後当時の在京コスタリカ大使が岡山市を答礼訪問し、同市で開催された博覧会を視察したことに始まる。1994年には、オスカル・アリアス大統領(ノーベル平和賞受賞者)も岡山市を訪問した。
    • 気仙沼市―プンタアレーナス
      1977年、新漁港建設のため、プンタレナス市の技術者が気仙沼市を視察に訪れたことが契機となり、プンタレナス市長から姉妹都市の提携について要請があった。気仙沼市の遠洋漁船が補給基地としてプンタアレーナスに寄港することが多かったことなどから、この申し出を受け入れ、市長、議長が同市を訪問して姉妹都市の締結を行った。
  3. パナマの姉妹都市
    1976年、パナマ共和国駐日大使が造船・海運業視察のため来日し、今治市長を表敬訪問した際に、パナマ市と今治市との姉妹都市提携について話し合いが行われた。その後、市は商工会議所(造船部会)より姉妹都市提携推進依頼を受け、1977年、パナマ共和国パナマ州知事がパナマ市長に代わって来日、姉妹都市提携の調印を行った。
  4. ボリビアの姉妹都市
    1989年春頃、沖縄県内のボリビア関係者からの姉妹提携申し入れがきっかけである。その後ボリビア県人会がサンタクルス州政府に働きかけ、その後沖縄県知事とサンタクルス州知事の相互訪問によって、1992年、提携に至った。サンタクルス市には日系移住者が多いことが最大の要因である。
  5. パラグアイの姉妹都市
    • 千葉市―アスンシオン
      当初、パラグアイ駐在の名誉領事から申し出があり、その後パラグアイ大統領の就任式に千葉県選出の代議士が日本の特派大使として参加したことから、提携に結びついた。
    • 大分県竹田市―サンロレンソ  サンロレンソはアスンシオンの衛星都市。
  6. その他コメント
    ラテンアメリカの主要国で、日本との姉妹都市関係を持たない人口1000万人以上の国は、アルゼンチン、コロンビア、ベネズエラ、グアテマラ、エクアドル、キューバ、ハイチ、ドミニカ共和国の8か国である。アルゼンチンとコロンビアは、人口4000万人を超える南米の大国であり、今後、姉妹都市の誕生を望みたい。表3 その他の中南米の国と姉妹都市関係を締結している都道府県市町村

    国名・県名 自治体名称 提携自治体名 州・県・市等 締結年月
    チリ
    奈良県 天理市 ラ・セレーナ コキンボ州 1966年10月
    コスタリカ
    宮城県 気仙沼市 プンタアレーナス 1978年5月
    岡山県 岡山市 サンホセ 1969年1月
    パナマ
    愛媛県 今治市 パナマ 1977年3月
    パラグアイ
    千葉県 千葉市 アスンシオン 1970年1月
    大分県 竹田市 サンロレンソ 1973年10月
    ボリビア
    沖縄県 沖縄県 サンタ・クルス州 1992年11月
    ジャマイカ
    鳥取県 鳥取県 ウエストモアランド県 不明

    出所:一般社団法人自治体国際化協会