執筆者:桜井 悌司(NPO法人イスパJP)

 

「世界遺産条約について」

 

国際連合教育科学文化機関(UNESCO)は、1945年国連総会で採択され、1946年に設立された。本部は、パリ。現在加盟国は194カ国である。UNESCOは、「世界遺産」、「無形世界遺産」、「世界の記憶」という3つのプログラムを運営している。

「世界遺産条約」は正式には「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」といい、1972年のUNESCO総会で採択され、1975年に発効した。2019年7月現在、193か国が加盟している。ちなみに日本の加盟は、1992年とブームの割にはずいぶん遅く、125番目である。

 

世界遺産は、「文化遺産」、「自然遺産」、「複合遺産」の3つに分かれている。2019年現在、合計1121か所、文化遺産、869(全体の78%)、自然遺産、213(19%)、複合遺産,39(3%)  その他危機遺産、53 取り消し遺産、2となっている。毎年、ユネスコ総会に新規の候補が提案されるので年々増加することになる。

 

2019年における世界遺産保有国のランキングは表1の通りである。1位は、イタリアと中国が分け合っており、55か所である。続いて、スペイン、ドイツ、フランスと続く。ラテンアメリカの国では、メキシコがトップで、第7位、35件、2位ブラジルが、第13位で、22件、3位ペルーが、24位、12件、4位アルゼンチンが、26位、11件と続いている。

 

表1 世界遺産 国別ランキング 2019年

 

順位 国名 合計 文化遺産 自然遺産 複合遺産
1位 イタリア 55 50
1位 中国 55 37 14
3位 スペイン 48 42
4位 ドイツ 46 43
5位 フランス 45 39
6位 インド 38 30
7位 メキシコ 35 27
8位 英国 32 27
9位 ロシア 29 18 11
10位 米国 24 11 12
10位 イラン 24 22
12位 日本 23 19
13位 ブラジル 22 14
14位 オーストラリア 20 12
14位 カナダ 20 10
16位 ギリシャ 18 16
16位 トルコ 18 16
18位 ポルトガル 17
19位 ポーランド 16 15
20位 スエーデン 15 13
21位 韓国 14 13
21位 チェコ 14 14
22位 ベルギー 13 12
24位 ペルー 12
24位 スイス 12
26位 アルゼンチン 11
  世界総計 1121 869 213 39

 

次に、表2でラテンアメリカのランキングをみよう。1位から4位までは、前述の通りだが、5位以下は、キューバ、コロンビア、ボリビア、チリ、エクアドル、パナマ、コスタリカ、グアテマラ、ベネズエラ、ウルグアイ、ニカラグアと続く。

 

ラテンアメリカは、合計146の世界遺産が登録されており、全世界に占めるシェアは、13.0%である。しかし、下記表のとおり、文化遺産は、11.7%、自然遺産は、16.9%、複合遺産は、20.5%となっており、複合遺産と自然遺産の比率が高くなっている。これはすなわち風光明媚で希少価値の高い世界遺産が多いと言える。

 

表2 ラテンアメリカの世界遺産国別ランキング

 

LA順位 世界順位 国名 合計 文化遺産 自然遺産 複合遺産
1位 7位 メキシコ 35 27
2位 13位 ブラジル 22 14
3位 24位 ペルー 12
4位 26位 アルゼンチン 11
5位 33位 キューバ
5位 33位 コロンビア
7位 45位 ボリビア
8位 54位 チリ
9位 59位 エクアドル
9位 59位 パナマ
11位 73位 コスタリカ
12位 84位 グアテマラ
12位 84位 ベネズエラ
14位 106位 ウルグアイ
14位 106位 ニカラグア
    他LA 11カ国 11
    LA合計 146 102 36
    世界合計 1121 869 213 39
    世界のシェア 13.0% 11.7% 16.9% 20.5%

 

世界遺産の登録数が1つの国は、下記の通り。

アンテイグア・バーブーダ、エルサルバドル、ジャマイカ、セント・クリストファー・ネービス、セントルシア、ドミニカ共和国、ハイチ、ドミニカ国、バルバードス、パラグアイ、ベリーズの11カ国である。

 

「無形世界遺産の世界とラテンアメリカのランキング」

 

UNESCO(国連教育科学文化機関)は世界遺産3大プログラムの一つである「無形世界遺産」について見てみよう。この条約は、2003年ユネスコ総会で採択され、2008年に発効した。民俗文化財・フォークロア・交渉伝統等の保存を目的とするものである。

 

178カ国が加盟、うち127カ国が遺産登録している。2008年~2019年で登録された件数は、世界で549件 代表リスト463、緊急保護リスト64、グッドプラクテイス22である。グッドプラクテイスは、条約の精神に則った無形文化遺産保護の最良例を意味する。

 

日本は、25件を登録しており、代表的なもの:能楽、人形浄瑠璃、雅楽、アイヌ古式舞踊、結城紬、和紙、和食、山・鉾・屋台行事、来訪神等である。

 

ランキングを見ると、中国、日本、韓国が上位を占めており、スペイン、トルコ、フランス、クロアチア、モンゴル、イラン、ベルギー、アゼルバイジャン、インド、ベトナムと続いている。ラテンアメリカでは、ペルーが、12件で14位に入っている。

 

表3 無形遺産の登録件数世界ランキング

 

順位 国 名 合計数 代表

リスト

緊急保護リスト グッドプラクテイス
1位 中国 40 32
2位 日本 21 21
3位 韓国 20 20
4位 スペイン 19 16
5位 トルコ 18 17
5位 フランス 18 17
7位 クロアチア 17 15
8位 モンゴル 15
9位 イラン 14 12
10位 ベルギー 13 11
10位 アゼルバイジャン 13 11
10位 インド 13 13
10位 ベトナム 13 12
14位 イタリア 12 12
14位 ペルー 12 10
  合計数 549 463 64 22
  加盟国数 178        
  無形遺産保有国127        

 

ラテンアメリカにおける無形世界遺産の登録数の国別ランキングと主要な登録案件は表4の通りである。これを見ると。先住民やアフリカ系の住民の多い国に案件が集中していることが理解できる。また音楽、踊り、祭り、カーニバルの類が多く登録されている。

 

表4 ラテンアメリカ諸国の世界無形遺産登録件数ランキング

 

順位 国名 件数 主  要  案  件
1位 ペルー 12 タキーレとその織物芸術、ハサミ踊り、プーノのビルヘン・デ・ラ・カンデラリア祭り
2位 メキシコ 11 死者に捧げる原住民の祭礼、マリアッチ、ボラド―レス、伝統的なメキシコ料理、タラベラ陶器の職人芸
2位 コロンビア 11 マリンバ、バランキージャのカーニバル、リャノ労働歌
4位 ブラジル サンバ・デ・ローダ、カポエラ・サークル、フレヴォ・レシーフェのカーニバルの舞台芸、ベレンのナザレ祭
5位 ボリビア オルーロのカーニバル
6位 ベネズエラ リャノ労働歌、エル・カヤオのカーニバル
7位 キューバ ルンバ、ラス・バランダスの祭
7位 ドミニカ共 メレンゲの音楽とダンス、バチャータの音楽とダンス
9位 グアテマラ ラビナル・アチ信闘劇の伝統
9位 エクアドル マリンバ、トキヤ帽
11位 ジャマイカ レゲエ音楽
11位 ニカラグア ガリフナの言語・舞踏・音楽
11位 パナマ コンゴ文化の儀式と祝祭表現
11位 アルゼンチン タンゴ
11位 ウルグアイ タンゴ
11位 チリ バイレ・チーノ
17位 コスタリカ コスタリカの牧牛と牛車の伝統
17位 ベリーズ ガリフナの言語・舞踏・音楽
17位 ホンジュラス ガリフナの言語・舞踏・音楽
  LA総件数 85  
  世界総件数 549  
  シェア 15.5%