!私たちには本がある!

10月21日、第7回イスパJPスペイン語文学イベント「書物は人類を救う ー 『パピルスのなかの永遠』を読む 対談:山本貴光(文筆家) x 見田悠子(翻訳家)」を開催しました。

 『パピルスのなかの永遠』(El infinito en un junco)はスペインの文献学者イレネ・バジェホによる、書物と読書の3000年にわたる歴史エッセイです。世界で100万部のベストセラーとなった話題の書であり、バルガス・リョサからは今日の読者が来世にあっても読み継がれるだろうと絶賛されました。
 その本が日本でも近々翻訳出版されることを機に、イスパJPは書物愛にあふれる文筆家、山本貴光さんと、この大著の翻訳者、見田悠子さんをお迎えし、たぐいまれな本書の読みどころについて語っていただきました。千駄木の会場に来てくださった方々、オンラインで視聴してくださった方々、あわせて約70名のご参加をいただいたことに深くお礼申し上げます。
 対談では、はっとするようなテーマが次々にとりあげられました。ほんのわずかですがご紹介すると、ダッハウでもロシアでも強制収容所という極限状態において人々は密かに読書クラブを立ち上げて生き延びたこと、声による口承文芸であったホメロスの長大な叙事詩を21世紀の私たちも読めるのは、古代の無名の人々が後の世のためパピルスという脆い素材に一行一行手で書き写したからであること、文字の誕生により人々に批判精神が培われたこと、アレキサンドリア図書館は当時のgoogleだったこと等々……。山本さんは関連する書籍を何冊も持ってきてご紹介くださり(リスト下記)、見田さんはバジェホが執筆に込めた思いや翻訳で苦労した点にも言及。

そのほか、記憶、目録、司書や書店員、コンピュータなど、古代と現代を生き生きとつなぐバジェホと同様にhttps://hispajp.org/event_report/bungaku_no7/?preview=true、多様なテーマが豊かに展開する2時間となりました。

 本は時と文化を越えて人と人とを結びます。本は言語や国境を越え、ときには敵対する国の書籍が本棚には隣どうしに並び、まさに革命的な状況が出現しています。
 バジェホが自分の気持ちを書いてくれたと感じる読書愛好家”パピルス族”にとって、今回の対談は幸せな午後のひとときとなったことでしょう。
 どうぞこの貴重な機会をお見逃しなく。そして、表紙デザインもユニークな『パピルスのなかの永遠』(作品社刊)をぜひ手に取ってください。
3.イスパJP出版交流プログラム https://hispajp.org/publicacion/
 イベントのもようは、作品社のnoteでお読みいただけます。