執筆者:桜井 悌司(NPO法人イスパJP)
「はじめに」
2021年4月より、ラテンアメリカ協会のホームページの「投稿欄」のレポート・コーナーで「ラテン好きのためのリベラル・アーツ」というシリーズを開始した。その目的は、ラテンアメリカとのビジネスに従事する方々や駐在員の方々に、ラテンアメリカに関する教養力、知識力、雑学力をより一層高めていただくことにある。4月には、「ラテンアメリカのノーベル賞受賞者」、5月には、「ラテンアメリカの国花と国鳥」、「ラテンアメリカ出身のメジャーリーガーたち」、6月は、「ラテンアメリカの著名サッカー選手」、7月は、「ラテンアメリカの著名建築家」、「ラテンアメリカのオリンピック・ゴールドメダリスト」を取り上げた。今回は、「ラテンアメリカの著名作家たち」ということで、小説家や詩人を中心に紹介する。
ラテンアメリカでビジネスを展開する上で、最も重要なことは人脈を開拓することであろう。要するに重要なアミーゴをたくさんつくることである。筆者の経験から言うと、友人作りの最も効果的な方法は、一緒に食事をすることである。日本での食事会と異なり、ラテン世界での食事会はゆったりしたものである。それゆえ、ビジネスの話だけでなく、多様なテーマについて意見交換することになる。家族の話、趣味、スポーツ、芸術、文化等の話である。相互に知識、経験、見識等を判断する絶好の機会であり、真剣勝負の場である。筆者の経験から言うと、文学、音楽、絵画、芸術等、文化的な話題につき意見交換すると相手から敬意を表されることが多い。
筆者は、せいぜい日本の大学とスペインの大学で「イスパノアメリカ文学史」を聴講したくらいであるので、文学の専門家ではない。それゆえに、全くの素人として、ラテンアメリカの文学の流れや作家たちについて、文学が専門でない日本のラテン好きのために、可能な限りわかりやすく紹介することに努めたい。
本稿の構成は、最初にラテンアメリカ文学の大まかな流れを説明し、全体像をざっと把握してもらうこととする。次にスペイン等が主催する主要文学賞のラテンアメリカ諸国の受賞者リストを紹介しながら、スペイン及び世界で良く知られた主要作家を大まかに把握する。後編では国別にどのような小説家、詩人がいるのかにつき具体的に紹介する。本稿では、主としてスペイン語圏の文学を取り上げることになるが、最後の国別のところで、ブラジルの主要小説家も10名ばかり紹介することにした。
1. ラテンアメリカ文学の大まかな流れ
ラテンアメリカ文学の大まかな流れを追ってみよう。参考書やインターネット、ウイキペデイア等をチェックし、どのように紹介するのが最もわかりやすいかを探ってみたが、日本大百科全書(ニッポ二カ)の解説で、日本の著名なスペイン文学研究者で多数の翻訳書もある桑名一博氏が簡単明瞭に流れを解説されておられるので、その流れに沿って、筆者の考えも一部入れて紹介しよう。
1)先住民の文学
クリストバル・コロンが1492年にアメリカ大陸に到達した時には、中米のメゾアメリカには、アステカ、インカ、アンデス地域には、インカという高度に発達した文明が栄えていた。しかしインカは文字を持たなかった。伝達の方法には、4万キロに及ぶインカ道とキープと呼ばれるロープのようなものが使われていた。マヤはマヤ文字を持っていたが、彼ら自身で書き残したものは残されていない。先住民の文化に関心を持つスペイン人宣教師たちは、先住民の話すナワトル語、マヤ語、ケチュア語等を学び、先住民の口承文化をラテン文字で精力的に記録しておいた結果、現在に貴重な作品が残っている。その代表的なものは、下記の通りである。
「ポポルブフ」(Popol Vuh) マヤ地域で伝承された神話。マヤ文明の天地創造にまつわる話で、マヤの人々の世界観を知ることができる。故林屋栄吉大使の翻訳で有名である。
「チラムバラムの予言」(Chilam Balam) 18世紀から19世紀にかけてユカタン半島の人々によって、歴史、予言、宗教、祭祀、暦等について書かれた文書の総称で、地域ごとの予言がある。チラムは神の代弁者、バラムはジャガーを意味する。
戯曲「オジャンタイ」(Ollantay) ケチュア語で書かれたインカの将軍オジャンタイの恋物語。
2)征服・植民地時代の文学
クリストバル・コロンのアメリカ大陸到達に続いて、多くのスペインの征服者たちや聖職者たちがアメリカ大陸を次々と植民化していった。岩波書店では、1960年代から90年にかけて、「大航海時代叢書」を発行している。第一期は12冊を刊行した。その中には、「コロンの4回の航海」、「アメリゴ・ヴェスプッチの書簡集」、 「バルボアの太平洋発見」、「マガリャンイス最初の世界一周航海」等が含まれている。第2期は25冊で、その中には、バルトロメ・デ・ラス・カサス(Fray Bartolomé delas Casas)の「インデイアス史」5巻、シエサ・デ・レオン(Cieza de León)による「インカ帝国史」などがある。ラス・カサスは、「インディアス破壊についての簡潔な報告」(1542年)により、インディオの人権を擁したことでも有名である。
さらにエキストラ・シリーズの5冊には、ベルナール・ディアス・デル・カスティーリョ(Bernal Díaz del Castillo)による「メキシコ征服記」(1552年)3巻、とインカ王族の末裔であるインカ・ガルシラーソ・デ・ラ・ベガ(Inca Garcilazo de la Vega)の「インカ皇統記」(1609年~17年)2巻が含まれている。インカ皇統記は、スペイン人到来前のインカ帝国の生活を描いたものである。筆者も老後の時間つぶしのためにこのシリーズを全巻購入したが、まだ手を付けるにいたっていない。
16世紀の半ばに書かれたアロンソ・デ・エルシーリャ(Alonso de Ercilla)による「アラウカーナ」についても紹介する必要がある。チリのアラウコ族のスペインの征服者たちの英雄的な戦いぶりを描いた叙事詩である。チリ人の国民性の形成にも影響を与えた。
もう1名「新大陸」代表するバロック詩人のひとりであるソル・フワナ・イネス・デ・ラ・クルス(Sor Juana Inés de la Cruz)を紹介する。植民地時代を通してもっとも才能に恵まれた文学者として知られており、詩のみならず戯曲も手掛けた。植民地時代を通しての最大の文学的遺産だと評価する人もいる。
ソル・フアナ・イネスとインカ・ガルシラーソを除き、上記の作者、作品のほとんどは本国のスペイン人が執筆したものであるが、ラテンアメリカの文学を知る上で有意義な情報と言えよう。
3)形成期の文学
アステカ、マヤ、インカの征服によって、スペインはブラジルを除くラテンアメリカを植民地化する。その後、19世紀に入ると、ハイチの独立(1804年)を最初に、パラグアイ(1811年)、リオ・ラプラタ連合州(1816年)、大コロンビア(1819年)、メキシコ(1821年)と次々に独立を達成する。独立の原因は、スペイン帝国の弱体化、本国人(ペニンスラール)と植民地生まれのクリオージョとの対立等々が挙げられるが、19世紀に入り、フランス等から啓蒙思想が流入し、クリオージョたちに大きな影響を与えたことも重要な要因である。フランス革命(1789年)、アメリカ合衆国の独立(1782年)等世界を揺るがす出来事が次々と発生した。それらの動きに呼応して、ラテンアメリカの文学活動も社会・政治批判を伴うジャーナリズムが勃興(ぼっこう)し、それまでの詩中心の文学活動に小説も加わるようになった。
このような環境にあって、新大陸最初の本格的な小説と呼ぶべき作品が登場した。メキシコ人のフェルナンデス・デ・リサルディ(Fernández de Lizardi)(1776―1827)の「疥癬(かいせん)病みのオウム」(El Peringuillo Sarmiento)1816)が刊行された。各国の独立に伴い、本格的にラテンアメリカの時代が始まることになる。
この時期、ヨーロッパではロマン主義の全盛期であり、独立運動を通して形成された社会的関心の強さと相まって、ラテンアメリカ文学の潮流を形成していく。この形成期を代表するものとして下記の作品をあげることができる。
- ドミンゴ・ファウステイーノ・サルミエント(Domingo Faustino Sarmiento、アルゼンチン)の「ファクンド――文明と野蛮」(Facundo)(1845)専制者ロサスを批判する目的で書かれたもの。
- ホセ・エルナンデス(José Hernández、アルゼンチン)の「マルティン・フィエロ」(Martín Fierro、La Vuelta de Martín Fierro )(1872、79)ガウチョの叙事詩の名作。
- リカルド・パルマ(Ricardo Palma、ペルー)の「ペルー伝説集」(Tradiciones Peruanas(1872~1910)
4)モデルニスモ(近代主義)の時代
独立もほぼ達成し、19世紀の後半になり、フランスの象徴主義や高踏主義の影響が及んでくると、キューバのホセ・マルティ(José Martí)メキシコのグティエレス・ナヘラ(Gutiérrez Nájera)、コロンビアのホセ・アスンシオン・シルバ(José Asunción Silva)といった若い詩人たちが、当時の文学界で支配的であったロマン主義を批判し、音楽性に富んだリズムで新しいテーマを取り上げるようになった。その動きはモデルニスモと呼ばれるようになった。その中にあって、ニカラグアの詩人ルベン・ダリオが「青」(Asul 1888)の発行によって大いに注目されるようになる。さまざまな詩法やエキゾチックな題材により、ダリオの作品は、かつての旧宗主国スペインの詩人たちにも絶大な影響を与え、スペイン語による文学活動に一転機をもたらした。
5)20世紀の文学
ルベン・ダリオの死(1916年)を契機として、モデルニスモも下降線をたどる。それに代わって出てきたのは ①ビセンテ・ウイドブロVicente Huidobro(チリ、1893―1948)の創造主義、②ホルヘ・ルイス・ボルヘスJorge Luis Borges(アルゼンチン、1899-1986)の超越主義、あるいはフランスから到来した超現実主義といった前衛的な文学運動であった。しかしモデルニスモが播(ま)いた種はこうした運動の刺激を経て成長し、世紀のなかばには、パブロ・ネルーダPablo Neruda(1904-1973 チリ)、ホルヘ・カレーラ・アンドラーデJorge Carrera Andrade(エクアドル、1903-78)、オクタビオ・パスOctavio Paz(メキシコ、1914-1998)といった、国際的に注目される詩人たち出現する。
以上が詩の分野であるが、ラテンアメリカにおいては詩がつねに注目を浴びてきたと言える。一方、小説の歴史は浅い。前述のように18世紀にその萌芽がみられるものの、小説が文学活動の重要な役割を占めるようになるのは、19世紀の後半以降である。しかし20世紀に入り、第一次世界大戦によってヨーロッパの危機意識が深まったこともあって、「新大陸」の特異な事象や地域に根差した題材を取り上げた小説に世界の関心が寄せられてきた。桑名氏が紹介する作品は次の3作である。
- ホセ・エウスタシオ・リベラ José Eustasio Rivera(コロンビア、1888-1928)の「渦」La Vorágine(1924)
- リカルド・グイラルデスRicardo Güiraldes (アルゼンチン、1886-1927)の「ドン・セグンド・ソンブラ」Don Segundo Sombra(1926)
- ロムロ・ガジェーゴス(ベネズエラ、1884-1969)の「ドニャ・バルバラ」Doña Bárbara(1929)
第二次世界大戦が終結し、世紀も後半に入った頃から、ラテンアメリカの小説が大きく変貌してきた。19世紀以来の写実一辺倒の作品に対して、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの「伝奇集」Ficciones(1944)に収められた諸編のように、緊密に構築された想像力の世界が描かれるようになる。その結果、ボルヘスの作品も世界的に広く読まれるようになった。
6)ラテンアメリカ文学ブームの時代とその後
1960年代から70年代のなかばにかけて、一連の長編小説が発表された。桑名氏は代表作として下記の作品を挙げている。
*フアン・ルルフォ Juan Rulfo(メキシコ)の「ペドロ・パラモ」Pedro Páramo(1955)
*フアン・カルロス・オネッティJuan Carlos Onetti (ウルグアイ)の「造船所」Elastillero(1961)
*アレホ・カルペンティエール Alejo Carpentier(キューバ)の「光の世紀」El siglo de las luces(1962)
*カルロス・フエンテス Carlos Fuentes(メキシコ)の「アルテミオ・クルスの死」(1962)La muerte de Artemio Cruz
*フーリオ・コルタサル Julio Cortásar(アルゼンチン)の「石蹴り遊び」Rayuela(1963)
*マリオ・バルガス・リョサ Mario Vargas Llosa (ペルー)の「緑の家」La casaverde(1965)
*ホセ・レサマ・リマJose lezama Lima (キューバ)の「パラディソ」Paradiso(1966)
*ギジェルモ・カブレラ・インファンテ Guillermo Cabrera Infante(キューバ)の「淋(さび)しい三頭の虎たち」Tres Tristes Tigres(1967)
*ガブリエル・ガルシア・マルケス Gabriel Garcia Marques(コロンビア)の「百年の孤独」Cien años de soledad(1967)
これらの作品の多くは物語性豊かな世界を前衛的な技法を駆使して描いたもので、その果敢な実験的試みが読書人の関心を集め、世界中にラテンアメリカ文学ブームを引き起こすことになった。とくに現実的世界と想像の世界とを、渾然一体として描く手法は「魔術的リアリズム」とよばれ、多くの人々に注目されるようになった。
ラテンアメリカの小説がなぜ1960年代になってこのような変貌をみせた理由として下記の点を指摘する。①スペイン内戦によって亡命してきた知識人たちの知的活動の影響、②第二次世界大戦によるヨーロッパとの文化的交流の断絶といった外的要因、③未開と文明が共存する自分たちの世界を、自らの手で表現できるまでに成熟した作家たちの誕生、④それを受け入れる新しい読者層の形成 等である。
1970年代の後半あたりから、「ブームの世代」とよばれる代表的な作家たちの作品から徐々に前衛性が失われていくが、時を同じくして、新しいタイプの小説家たちが登場してくる。桑名氏があげる代表作は次の通り。
*「仔(こ)うさぎ」Gazapo(1964)のグスターボ・サインスGustavo Sainz(メキシコ、1940― )
*「めくるめく世界」El mundo alucinante(1969)のレイナルド・アレナスReinaldo Arenas(キューバ、1943―90)
*「至高の君主たる余は」I, the Supreme(1974)のアウグスト・ロア・バストスAugusto Roa Bastos(パラグアイ、1917―2005)
*「蜘蛛(くも)女のキス」El beso de la mujer araña (1976)のマヌエル・プイグ Manuel Puig(アルゼンチン)
*「精霊たちの家」La casa de espíritus(1982)のイサベル・アジェンデIsabel Allende(チリ、1942― )
*「郵便配達人」El Cartero de Neruda,Il ostino(1995)のアントニオ・スカルメタAntonio Skármeta(チリ、1940― )などである。
こうした新世代の作家たちの作風は、大勢としてはリアリズムを基調とした伝統的な技法に回帰しており、ポップ・カルチャー、麻薬、性に耽溺(たんでき)する若者の生態を話しことばを多用して描いたり、ドキュメンタリーの手法を取り入れながら政治的な腐敗を告発している。
7)注目すべきアルゼンチンとメキシコの出版社の活動
イスパノアメリカ文学のスペイン語圏への普及にアルゼンチンとメキシコの出版社が大きく貢献したことを忘れてはならない。「ラテンアメリカ文学入門」(寺尾隆吉著 中公新書)にその間の事情につき詳細に説明されている。
アルゼンチンは、20世紀初頭には世界に冠たる経済大国で、イタリアやスペインから多数の移民を受け入れていた。ヨーロッパの文学、芸術等に対する関心度や理解度も高く、国の識字率や文化水準も極めて高かった。このような環境下にあって、有力な出版社が文芸作品の出版に乗り出してきた。「ロサダ社」、「スダメリカーナ社」、「エメセー社」等である。寺尾氏によれば、アルゼンチンは1940年代以降21世紀にいたるまで、ラテンアメリカ随一の文学大国として、揺るぎない地位を守り続けているとのことである。確かにアルゼンチンには目の肥えた読者が多い。
一方、メキシコも1930年代のラサロ・カルデナス大統領時代に、石油の国有化や農地改革を進めるとともに、政府主導で文化活動に力を入れた。絵画、映画、演劇、文学などの分野である。出版業もそれに伴い発展し、現在ではスペイン語圏で大きな影響力を持つ「フォンド・デ・クルトゥーラ・エコノミカ社」が1934年に創設された。教育事業と結びついていた「ポルア社」、「ディアナ社」、「グリハルボ社」なども文学作品の出版を開始した。
スペインでは、「グルポ・プラネタ社」に注目すべきだろう。スペインにはスペイン語文学に対する各種賞が存在する。公的なものとしては、「セルバンテス賞」や「アストゥ―リアス皇太子賞」が挙げられる。一方民間の出版社も数多くの賞を創設している。本稿でも取り上げたが、「ナダル賞」(1944年、Ediciones Destino社によって創設、現在はグルポ・プラネタの一部)、「プラネタ賞」(1952年、プラネタ社によって創設)、ビブリオテカ・ブレベ賞(1958年、セイス・バラル社によって創設、現在はグルポ・プラネタ社の一部)に見られるごとく、グルポ・プラネタ社の影響力は極めて強いことが理解できよう。
スペイン等主要文学賞のラテンアメリカの受賞者リスト
ここでは、「セルバンテス文学賞」等6つの代表的な文学賞のラテンアメリカ人の受賞者をリストアップする。他にもアルファグアラ賞、カサ・デ・ラス・アメリカス賞、スペイン批評賞、フアン・ルルフォ賞など多くの賞が存在する。
1)セルバンテス文学賞(Premio de Literatura en Lengua Castellana Miguel de Cervantes) 受賞者一覧(イスパノアメリカ)
セルバンテス文学賞は、1975年にスペイン文部省によって設立されたスペイン語文学の最高賞である。1976年から2020年までに46名に対して授与された。国別では、スペイン24名、メキシコ6名、アルゼンチン3名、チリ3名、キューバ3名、ウルグアイ2名、コロンビア、ニカラグア、パラグアイ、ペルーが各1名となっている。この賞は受賞者の業績に対して与えられる。
イスパノアメリカの作家の受賞者リスト
年 度 | 受 賞 者 名 | 国 籍 | 分 野 |
1977 | Alejo Carpentier | キューバ | 小説、エッセイ |
1979 | Jorge Luis Borges | アルゼンチン | 短編、詩、エッセイ |
1980 | Juan Carlos Onetti | ウルグアイ | 小説 |
1981 | Octavio Paz | メキシコ | 詩、エッセイ |
1984 | Ernesto Sábato | アルゼンチン | 小説、エッセイ |
1987 | Carlos Fuentes | メキシコ | 小説、エッセイ |
1989 | Augusto Roa Bastos | パラグアイ | 小説 |
1990 | Adolfo Bioy Cásares | アルゼンチン | 小説、短編 |
1992 | Dulce María Loynaz | キューバ | 詩 |
1994 | Mario Vargas Llosa | ペルー | 小説、エッセイ、短編 |
1997 | Guillermo Cabrera Infante | キューバ | 小説 |
1999 | Jorge Edwards | チリ | 小説 |
2001 | Alvaro Mutis | コロンビア | 詩、小説 |
2003 | Gonzalo Rojas | チリ | 詩 |
2005 | Sergio Pitol | メキシコ | 小説 |
2007 | Juan Gelman | アルゼンチン | 詩 |
2009 | Jose Emilio Pacheco | メキシコ | 詩、小説、短編 |
2011 | Nicanor Parra | チリ | 詩 |
2013 | Elena Poniatowska | メキシコ | 小説 |
2015 | Fernando del Paso | メキシコ | 小説、詩、エッセイ |
2017 | Sergio Ramírez | ニカラグア | 小説、短編、エッセイ |
2018 | Ida Vitale | ウルグアイ | 詩、散文、エッセイ |
2)アスツトゥ―リアス皇太子賞(Premio Príncipe de Asuturias)受賞者一覧(イスパノアメリカ)
アストウリアス皇太子賞は、1980年にアストウリアス皇太子財団によって創設され、コミュニケーション、社会科学等8部門がある。ここでは文学部門で受賞したラテンアメリカの作家をリストアップした。この賞は、受賞者の業績に対して与えられるものでジョアン・ミロの彫像と5万ユーロの賞金が授与される。
「文学部門」1981年より表彰
1983 – フアン・ルルフォ (Juan Rulfo) メキシコ
1986 –マリオ・バルガス・リョサ (Mario Vargas Llosa) ペルー
1990 – アルトゥーロ・ウスラル・ピエトリ (Arturo Uslar Pietri) ベネズエラ
1991 – プエルトリコの国民
1994 – カルロス・フエンテス(Carlos Fuentes) メキシコ
1997 – アルバロ・ムティス (Álvaro Mutis) コロンビア
2000 – アウグスト・モンテローソ(Augusto Monteroso) グアテマラ
2005 – ネリダ・ピニョン (Nélida Piñón) ブラジル
2015 – レオナルド・パドゥーラ・フエンテス(Leonardo Padura Fuentes) キューバ
3)ナダル賞(Premio Nadal)受賞者一覧(イスパノアメリカ)
ナダル賞は、1944年に、スペインの出版社であるEdiciones Destino社(Planeta社の一部)によって創設され、最も歴史のある文学賞である。賞金は、18,000ユーロ。ほとんどの受賞者はスペイン人である。
受賞年 | 受 賞 者 | 国 籍 等 | 作 品 |
1963 | Manuel Mejía Vallejo | コロンビアの作家、ジャーナリスト | El Día señalado |
1965 | Eduardo Caballero Calderón | コロンビアの作家、ジャーナリスト | El Buen salvaje |
1987 | Juan José Saer | アルゼンチンの作家 | La Ocasión |
2019 | Guillermo Martínez | アルゼンチンの作家 | Los Crimenes de Alicia |
4)プラネタ賞(Premio Planeta de Novela) 受賞者一覧(イスパノアメリカ)
プラネタ賞は、1952年、スペインの出版社であるGrupo Planeta社によって創設された。賞金が601,000ユーロと巨額なことでも有名である。
受賞年 | 受 賞 者 | 国 籍 等 | 作 品 名 |
1967 | Eugenio Juan Zappietro | アルゼンチンのコミック作家 | Tiempo de morir |
1969 | Manuel Scorza | ペルーの小説家・詩人 | Redoble por rancas |
1970 | Marcos Aquinis | アルゼンチンの作家 | La Cruz invertida |
1972 | Jesús Zárate | メキシコのサイクリスト | La Cárcel |
1980 | Antonio Larreta | ウルグアイの作家・批評家 | Volavent |
1987 | Fernando Fernando Gómez | スペイン・ペルーの俳優・劇作家 | El mal amor |
1993 | Mario Vargas Llosa | ペルーの作家 | Lituma en los Andes |
1996 | Zoe Valdes | キューバの小説家 | Te di la vida entera |
1998 | Carmen Posadas | ウルグアイ・スペインの作家 | Pequeñas infamias |
2001 | Marcela Serrano | チリの小説家 | Lo que está en mi corazón |
2002 | Alfredo Bryce Echenique | ペルーの作家 | El huerto de mi amada |
2003 | Antonio Skármeta | チリの作家 | El baile de la victoria |
2005 | Jaime Bayly | ペルーの作家・ジャーナリスト | Y de repente un ángel |
2007 | Boris Izaguirre | ベネズエラ・スペインの作家 | Villa Diamante |
5)ロムロ・ガジェーゴス賞(Premio Romulo Gallegos、ベネズエラ)受賞者一覧(イスパノアメリカ)
ロムロ・ガジェーゴス賞は、ベネズエラの大統領で作家であったロムロ・ガジェーゴスにちなむ賞で、1967年に創設され、作品に対して授与される。
受賞年 | 受賞者 | 国籍等 | 受賞作品 |
1967 | Mario Vargas Llosa | ペルー | La casa verde |
1972 | Gabriel Garcia Marquez | ベネズエラの作家、ジャーナリスト | Cien años de soledad |
1977 | Carlos Fuentes | メキシコの作家 | Terra nostra |
1982 | Fernando de Paso | メキシコの作家 | Palinuro de Mexico |
1987 | Abel Posse | アルゼンチンの作家 | Los perros de paraíso |
1989 | Manuel Mejía Vallejo | コロンビアの作家 | La casa de las dos palmas |
1991 | Arturo Uslar Pietri | ベネズエラの作家・政治家 | La visita en el tiempo |
1993 | Mempo Giardinelli | アルゼンチンの作家 | Santo oficio de la memoria |
1997 | Angeles Mastretta | メキシコの作家 | Mal de amores |
1999 | Roberto Bolaño | チリの作家 | Los detectives salvajes |
2003 | Fernando Vallejo | コロンビアの作家 | El desbarrancadero |
2007 | Elena Poniatowska | メキシコの作家 | El tren pasa primero |
2009 | William Ospina | コロンビアの作家 | El país de la canela |
2011 | Ricardo Piglia | アルゼンチンの作家 | Blanco nocturno |
2013 | Eduardo Laio | プエルトリコの作家 | Simone |
2015 | Pablo Montoya | コロンビアの作家 | Tríptico de la infamia |
2018 | 中止 | ||
2020 | Perla Suez | アルゼンチンの作家 | El país del diablo |
BIBLIOTECA BREVE賞受賞者
この賞は、1958年にバルセロナの出版社Seix Barral社(現在はPlaneta社の一部)によって創設された。スペイン語で書かれた作品に贈られる。賞金は、3万ユーロ。
「第1期」(1958年~1972年)
1962年 – マリオ・バルガス=リョサ(ペルー) La ciudad y los perros
(都会と犬ども)
1963年 – ビセンテ・レニェーロ(メキシコ) Los albañiles
1964年 – ギリェルモ・カブレラ=インファンテ(キューバ) Tres tristes tigres
1967年 – カルロス・フエンテス(メキシコ) Cambio de piel(『脱皮』)
1968年 – アドリアーノ・ゴンサレス・レオン(ベネズエラ) País portátil
1970年 – ホセ・ドノソ(チリ) El obsceno pájaro de
la noche(夜のみだらな鳥)
1971年 – ニバリア・テヘーラ(キューバ) Sonámbulo del sol
「第2期」(1999年~現在)
1999年 – ホルヘ・ボルピ(メキシコ) En busca de Klingsor
2000年 – ゴンサーロ・ガルセス(アルゼンチン) Los impacientes
2002年 – マリオ・メンドーサ(コロンビア) Satanás
2004年 – マウリシオ・エレクトラー(チリ)La burla del tiempo
2008年 – ジョコンダ・ベッリ(ニカラグア) El infinito en la palma de lamano
2010年 – ギジェルモ・サッコマンノ(アルゼンチン) El oficinista
2011年 – エレーナ・ポニアトウスカ(メキシコ) Leonora
7)ラテンアメリカの十大小説
神戸市外国語大学名誉教授の木村榮一氏が、2011年に、岩波新書で発行された「ラテンアメリカの十大小説」の中で推奨されておられる小説は下記のとおり。すべて翻訳されている。ラテンアメリカ文学を読んでみようと考える読者には最適。
- ホルヘ・ルイス・ボルヘス(アルゼンチン) 「エル・アレフ」(El Aleph)
- アレホ・カルペンテイエル(キューバ) 「失われた足跡」(Los pasos perdidos)
- ミゲール・アンヘル・アストゥリアス(グアテマラ)「大統領閣下」(El señor presidente)
- フーリオ・コルタサル(アルゼンチン) 「石蹴り」(Rayuela)
- ガブリエル・ガルシア・マルケス(コロンビア) 「百年の孤独」(Cien años de soledadad)
- カルロス・フエンテス(メキシコ) 「我らが大地」(Terra nostra)
- マリオ・バルガス・ジョサ(ペルー) 「緑の家」(La casa verde)
- ホセ・ドノソ(チリ) 「夜のみだらな鳥」(El obsceno pájaro de la noche)
- マヌエル・プイグ(アルゼンチン) 「蜘蛛女のキス」(El beso de la mujer araña)
- イサベル・アジェンデ(チリ) 「精霊たちの家」(La casa de los espíritus)
8)寺尾隆吉選書 邦訳で読むラテンアメリカ文学の、ベスト 20 作品
1 リアリズム文学の伝統
*マシャード・デ・アシス『ブラス・クーバスの死後の回想』1881(国際語学社、2009) *カルロス・フエンテス『澄みわたる大地』1958(現代企画室、2012)
*マリオ・バルガス・リョサ『都会と犬ども』1963(新潮社、2010)
*マリオ・バルガス・リョサ『世界終末戦争』1981(新潮社、2010)
*オラシオ・カステジャーノス・モヤ『崩壊』2006(現代企画室、2009)
2 カリブ世界と魔術的リアリズム
*ミゲル・アンヘル・アストゥリアス『グアテマラ伝説集』1930(岩波文庫、2009)
*アレホ・カルペンティエール『この世の王国』1949(水声社、1992)
*フアン・ルルフォ『ペドロ・パラモ』1955(岩波文庫、1992)
*ガブリエル・ガルシア・マルケス『百年の孤独』1967(新潮社、2006)
*ガブリエル・ガルシア・マルケス『族長の秋』1975(集英社文庫、2011)
3 ラプラタ地域と知的幻想文学の潮流
*アドルフォ・ビオイ・カサーレス『モレルの発明』1940(水声社、2008)
*ホルヘ・ルイス・ボルヘス『伝奇集』1944(岩波文庫、1993)
*アウグスト・モンテロッソ『全集 その他の物語』1959(書肆山田、2008)
*ホルヘ・ルイス・ボルヘス『創造者』1960(岩波文庫、2009)
*フアン・カルロス・オネッティ『屍集めのフンタ』1964(現代企画室、2011)
*フリオ・コルタサル『愛しのグレンダ』1981(岩波書店、2008)
4 詩集、回想録、エッセイ集など
*オクタビオ・パス『弓と竪琴』1956(岩波文庫、2011)
*レイナルド・アレナス『夜になる前に』1992(国書刊行会、2001)
*ロベルト・ボラーニョ『通話』1998(白水社、2009)
*フアン・ヘルマン『価値ある痛み』2001(現代企画室、2010
後編に続く