タイトル:救出の距離
著:サマンタ・シュウェブリン
訳:宮﨑真紀
出版社:国書刊行会
刊行年月日: 2024年9月24日
ISBN: 978-4-336-07633-5
(原書 DISTANCIA DE RESCATE、2014)
世界で高い評価を受け、近年、日本でも注目度が増している「スパニッシュ・ホラー」。当ブログ内「マリアーナ・エンリケス著『寝煙草の危険』」のページでも取り上げたので、聞き覚えがあるという方も少なくないかもしれませんね。(詳しい説明は同ページをご覧ください:https://hispajp.org/info/literatura001/)。
このスパニッシュ・ホラーを牽引する存在といえるのが、サマンタ・シュウェブリン。1978年ブエノスアイレスに生まれて20代でデビュー、いくつもの重要な賞を獲得してきた出色の作家です。
日本でも『口の中の小鳥たち』(松本健二訳、東宣出版)、そして2022年に全米図書賞翻訳部門を受賞した『七つのからっぽな家』(見田悠子訳、河出書房新社)が翻訳出版されており、いずれも好評を博しています。
そして初めての長編となる本書『救出の距離』がこのほど、国書刊行会より発売されました。ホラーやダーク・ファンタジーの良作に与えられるシャーリィ・ジャクスン賞中長編部門を受賞、『悪夢は苛む』の邦題で映画化(Netflix)もされ、邦訳が待ち望まれていた作品です。
本書は『兎の島』(エルビラ・ナバロ著)、前出『寝煙草の危険』に続く〈スパニッシュ・ホラー文芸〉シリーズの第3弾。イスパJP会員の宮﨑真紀さんが翻訳を手がけた、美しい装丁の函入り本のシリーズで、ホラー好きの皆さんには既におなじみなのではないでしょうか。その内容はというと--。
アルゼンチンの片田舎の診察室で死にかけている女アマンダ、その横にたたずむ謎の少年ダビ。
彼女はなぜ死にかけているのか、ふたりは対話を通してその記憶を探っていく。
すべては熱に浮かされているアマンダの妄想なのか、ダビはそこにいるのかいないのか、そして愛する娘はどこに行ってしまったのか……(国書刊行会HPより)
いかがでしょう。このわずか数行で、不穏な空気を十分感じ取っていただけたことと思います。
読むほどに混迷が深まり、恐ろしくてたまらないのにページを繰る手が止まらない。癖になること間違いなしの、シュウェブリンが描き出す世界をご堪能ください。
※第8回イスパJPスペイン語文学イベント 翻訳家トーク 宮﨑真紀×白石朗 スパニッシュ? アメリカン? ホラーを読む 〜シュウェブリン『救出の距離』とキング『異能機関』を中心に〜
毎年開催しているイスパJPのイベントで、今年は本書を取り上げます。
宮﨑真紀さんとスティーブン・キングの訳で知られる白石朗さんにたっぷり語っていただくイベントです。
開催は10月14日(月・祝)、11月14日まで見逃し配信があります(お申し込みはhttps://horror-yomu.peatix.com/)。
ありそうでなかったスパニッシュ・ホラーとアメリカン・ホラーの翻訳者同士の対談を、どうぞお聞き逃しなく。
※書評
「朝日新聞」鴻巣友季子の文学潮流(第18回) https://book.asahi.com/article/15448007
※サマンタ・シュウェブリンの邦訳作品
『口の中の小鳥たち』松本健二訳、東宣出版刊
詳細:http://tousen.co.jp/718
『七つのからっぽな家』見田悠子訳、河出書房新社刊
詳細:https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309207704/
※国書刊行会「スパニッシュ・ホラー文芸」シリーズ
『兎の島』エルビラ・ナバロ著、宮﨑真紀訳
詳細:https://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336073631/
『寝煙草の危険』マリアーナ・エンリケス著、宮﨑真紀訳
詳細:https://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336074652/
『救出の距離』本書
詳細:https://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336076335/