スペイン・ポルトガル・イベロアメリカと日本の姉妹都市提携について
執筆者: 桜井 悌司(NPO法人イスパニカ文化経済交流協会)
一般社団法人自治体国際化協会の最新のホームページ(2018年1月時点)によると、日本の都道府県市町村の海外諸国との姉妹都市提携の締結総数は、1702件となっており。国別ランキングをみると、米国、451件、中国、362件、韓国、162件、オーストラリア、140件、カナダ、71件、ブラジル、57件となっており、ブラジルは堂々第6位の位置を占めている。以下、ドイツ、53件、フランス、51件、ロシア、45件、ニュージーランド41件と続く。
さらに、調べていくと、スペインは、11件、ポルトガルは、7件となっている。イベロアメリカでみると、全体で80件あり、その内訳は、ブラジルが圧倒的で57件、以下、メキシコの11件、ペルーの4件、コスタリカとパラグアイの各2件、パナマ、ボリビア、チリ、ジャマイカが各1件となっている。本稿では、下記の表を参考にして、日本との姉妹都市に関わるいくつかの特徴を取り上げてみよう。
表1スペイン・ポルトガル・中南米諸国と日本の都市との姉妹関係数
国・地域名 | 都道府県 | 市区 | 町村 | 合計 |
スペイン | 3 | 8 | 0 | 11 |
ポルトガル | 0 | 7 | 0 | 7 |
欧州合計① | 3 | 15 | 0 | 18 |
メキシコ | 3 | 5 | 3 | 11 |
コスタリカ | 0 | 2 | 0 | 2 |
ジャマイカ | 1 | 0 | 0 | 1 |
パナマ | 0 | 1 | 0 | 1 |
ボリビア | 1 | 0 | 0 | 1 |
ペルー | 0 | 1 | 3 | 4 |
パラグアイ | 0 | 2 | 0 | 2 |
ブラジル | 11 | 35 | 11 | 57 |
チリ | 0 | 1 | 0 | 1 |
中南米合計② | 16 | 47 | 17 | 80 |
① +②合計 | 19 | 62 | 17 | 98 |
出所:一般社団法人自治体国際化協会
1. スペインとの姉妹都市提携の特徴
スペインと日本の姉妹都市提携は、合計11件であるが、いくつかの特徴が指摘できる。
1) 姉妹都市のきっかけは?
一番多いのが、歴史的な出来事に関係するものである。山口県、山口市は、フランシスコ・ザビエル関連、大船渡市は、スペインの探検家のセバステイアン・ビスカイーの使節団が大船渡湾をサン・アンドレス湾と名付けたところに由来する。ミッションの相互訪問がきっかけとなったのは、奈良市、丸亀市、呉市があげられる。その他神戸市は、お互いに港湾都市、和歌山県は、熊野古道とサンテイアゴ・デ・コンポステラ巡礼道という世界遺産の関係である。三重県は、三重サンベルト・リゾート構想でスペインをモデルにし、お互いの都市の共通点を考慮し結ばれた。
2) 1990年代の締結が多い
スペインは、1992年には、バルセロナオリンピック、セビリャ万国博覧会、ヨーロッパ文化都市のマドリードでの実施と3つの大きなイベントを開催し、最も輝いていた時期であった。その結果を、反映してか、90年、2件、92年、2件、93年、94年、96年、98年、それぞれ1件ずつと全体の11件のうち、8件が90年代となっている。2003年以降の案件はないが、スペインは魅力にあふれた国でもあるので、歴史、観光、食べ物・飲料などの観点からみて姉妹都市の候補都市はたくさんある。
表2 スペインと姉妹都市関係を締結している都道府県市町村
県名 | 自治体名称 | 提携自治体名 | 州・県・市等 | 締結年月 |
岩手県 | 大船渡市 | パロス・デ・ラ・フロンテーラ | アンダルシア州ウエルバ県 | 1992年8月 |
愛知県 | 清須市 | ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ | アンダルシア州 | 1994年1月 |
三重県 | 三重県 | バレンシア州 | 1992年11月 | |
兵庫県 | 神戸市 | バルセロナ | カタルーニャ州 | 1993年4月 |
兵庫県 | 豊岡市 | アリカンテ | バレンシア州 | 1996年6月 |
奈良県 | 奈良市 | トレド | カステイージャ・ラ・マンチャ州 | 1972年9月 |
和歌山県 | 和歌山県 | ガリシア州 | 1998年10月 | |
広島県 | 呉市 | マルベージャ | アンダルシア州マラガ県 | 1990年12月 |
山口県 | 山口県 | ナバラ州 | 2003年11月 | |
山口県 | 山口市 | パンプローナ | ナバラ州 | 1980年2月 |
香川県 | 丸亀市 | サン・セバスティアン | バスク国自治州ギプスコア県 | 1990年11月 |
出所:一般社団法人自治体国際化協会
2.ポルトガルとの姉妹都市協定の特徴
ポルトガルと日本の姉妹都市提携は、合計7件であるが、国際友好都市協定の逗子市とナザレーを加えると8件になる。姉妹都市のきっかけをみると、徳島市とレイリアは、ポルトガルのヴェンセスラオ・デ・モラエスの縁である。モラエスは軍人、外交官、文筆家で多くの日本紹介の著作がある。妻のよねの死亡後、よねの故郷の徳島に移り住む。大村市とシントラは、天正少年使節団が、1584年にシントラ宮殿を訪問したことに由来する。長崎市は、出島に向かったポルトガル船の母港という縁で、駐ポルトガル名誉総領事が仲介した。鹿児島県の西之表市は、鉄砲伝来450周年を記念して、大航海時代を切り開いたサグレス号ゆかりのヴィラ・ド・ビスポ市と提携。大分市は、大友宗麟の時代からポルトガルとは縁があるが、駐日ポルトガル大使から提案を受けた。海岸に面し、観光、商業都市として共通点があったことで締結に至った。熱海市は、国際的リゾート都市として共通点を持つカスカイス市と提携、熱海市は寄贈された100本のジャカランダの遊歩道で有名。
ポルトガルは、今、日本人観光客に注目されており、歴史的に日本とのつながりも深いところから、もっと姉妹都市が増加しても不思議ではない。
表3 ポルトガルと姉妹都市関係を締結している都道府県市町村
県名 | 自治体名称 | 提携自治体名 | 州・県・市等 | 締結年月 |
静岡県 | 熱海市 | カスカイス | リスボン県 | 1990年1月 |
徳島県 | 徳島市 | レイリア | ペイラ・リトラル州 | 1969年10月 |
長崎県」 | 長崎市 | ポルト | 1978年5月 | |
長崎県 | 大村市 | シントラ | 1997年8月 | |
熊本県 | 人吉市 | アブランテシュ | 2009年9月 | |
大分県 | 大分市 | アベイロ | 1978年10月 | |
鹿児島県 | 西之表市 | ヴィラ・ド・ビスポ | 1993年10月 |
出所:一般社団法人自治体国際化協会